いなほてらす(埼玉県東松山市2016/10)

~田んぼ中の稲穂のテラスはバリアフリー、2015年開業のJA系大型産直ショップ~

 

2015年11月に新築移転開業した、JA埼玉中央の産直ショップ「いなほてらす」です。

新しい施設なのでバリアフリー。ただし今どきの、そもそも段差がない完全バリアフリー設計まであと一歩、というレベルのバリアフリー施設です。

産直ショップ、フードコート、市民交流コーナーで構成されています。

 

立地環境はまさに「いなほてらす」。この施設は盛り土の上にあるので、隣に広がる田んぼを、少し高い目線から眺めることができます。

今回訪問時は稲刈り後の田んぼだったのですが、もう少し前なら、一面稲穂が風になびいていたことでしょう。

施設から見ることが出来る風景を、施設名称にする。このネーミング、気に入りました。

 

駐車場は広大。屋根無しですが、障害者用駐車スペースの設定はあります。

 

施設ハード面でやや気に入らない点をいうと、トイレと、屋外の所どころある小さな段差。

 

トイレは建物ビルドイン構造ながら、外から利用する設計。利用場所は建物の裏側。通常の男女別トイレの間に、障害者用トイレが一戸設置されています。

この設計は10年前のモノ。今では、屋内からの出入りで設計するのが常識です。利用者にわざわざ建物の裏側まで廻らせてトイレを利用させる。万引き防止や清掃の都合などで、10年前まではよく使われた設計です。

このトイレは不便。出来れば使ってくれるな、という設計意図でしょうか。

 

そして車椅子で通行すると気になるのが、屋外の所どころある小さな段差。まったく意味のない小さな段差が、屋外のあちらこちらに。気を付ければ、車椅子で乗り越えることが出来る程度の2~3cmの段差。なぜこういう設計にしたのか、理由が解りません。

 

特に駐車場から建物の裏のトイレに向かう動線にある、無駄な段差が気になります。車椅子や杖で移動する障害者や高齢者の実情が解っていない人の設計でしょう。最初から完全バリアフリーにすればいいものを。もったいないことです。

 

産直ショップ内の床面は、無駄な段差はありません。通路幅は車椅子での通行はできますが、2015年モノとしては、それほど広くはありません。

 

店舗の一角に、お豆腐屋さんが入り、小さなキッチンから試食をガンガンだしています。ミニキッチン付きで、試食攻めが出来るコーナー。これは面白いと思いました。

 

市民交流コーナーは、観光パンフレットなどが置いてあるだけのコーナー。施設建設にあたって、行政からの支援を受けたのでしょうが、有効活用されているとはいえません。潔く産直ショップの売り場にしたほうが、スペースとしては有効でしょう。

 

フードコートは、入店していたうどん・どんぶり屋さんが、8月で閉店していました。惣菜屋さんとラーメン屋さんは、元気に営業中。現在は2店舗のフードコートです。

フードコートの車椅子での利用は可能。床面はフラットで、テーブルと椅子は動かせます。

 

内装は地元の木材を多用したウッディな演出。天井は高く、採光も巧みで、建物内は産直ショップらしい、自然の恵みが似合う良い雰囲気です。

そういうイメージと同様の設計思想なのでしょうが、田んぼを臨む方向にある屋外の駐車場の一部区画は、わざと舗装をしないで芝生を植えています。雨上がりのときなど、ぐちゃぐちゃになりそう。

どうも屋外の設計になると、足の悪い人の行動がイメージ出来ていない設計です。

いなほてらす

JA埼玉中央の産直ショップは他にもありますが、知る限りでは狭くて古いショップばかり。この「いなほてらす」が、最初の大型ショップです。

初めてなので、細かいところがこなれていないのでしょう。気になる点を記しましたが、他の狭くて古いショップに比べれば、バリアフリー面は雲泥の差があります。

 

2015年モノにしては、先端のバリアフリー設計ではないことをご理解の上で、車椅子でお買い物にお出かけ下さい。

いっちょう東松山店(埼玉県東松山市2016/10)

~車椅子はエントランスが苦戦します、巨大店舗と独自ITで急成長中の飲食チェーン店~

 

北関東から埼玉エリアを中心に、あっという間に40店舗ほど出店した急成長中の居酒屋&レストランチェーン「いっちょう」。

高級料亭風の外観デザインと、個室を並べた店内レイアウト、そしてタブレットによる席からの遠隔セルフオーダーシステムが特徴です。

今回は、旗艦店舗の一つ「東松山店」のバリアフリー状況を調査しました。

 

今までの郊外型グルメ店とは、一味違う店舗設計です。

まず驚くのが敷地の広さ。駐車場は広大で、200台くらい収容できそうです。屋根無しですが、店舗エントランスの近くに、障害者用駐車スペースの設定があります。

 

店舗は巨大。高級料亭風の塀に囲まれていて、その中央部に門をくぐるようなイメージのアプローチの入口があります。

正面からみて、左側の棟が小グループ向けの個室棟。右側の棟が宴会向けの個室棟のようです。

駐車場からアプローチの入口まではフラットな舗装面で、車椅子の移動に問題はありません。

 

入口をくぐった先に、10mほどの和風アプローチがあります。このアプローチが、石畳み風のデコボコ。車椅子移動での難所です。

慎重にゆっくりデコボコをクリアしていけば、車椅子で通行は可能ですが、気を使います。杖を使うレベルの障害のある方も、慎重に進んで下さい。

 

アプローチの先に建物への出入り口があります。残念ながら、手動のドアを二度通る設計。ファミレスなどによくある設計です。ここも車椅子ではやや苦戦。ドアを開ける介助者が必要な設計です。

このアプローチとドアがバリア。店内に入れば、フラット構造。実用に耐える障害者用トイレもあります。

 

すべてが個室タイプお席です。受付マシンに人数を入力し、「座敷」か「テーブル」を選択します。座敷で掘りごたつのタイプ。テーブルで固定椅子のタイプ。テーブルで稼働椅子のタイプ。車椅子目線で区分けすると以上の3タイプの席があり、車椅子利用をみると、テーブルで稼働椅子の席に案内していただけました。

 

セルフサービスの方法が特徴的です。席に案内される途中に、飲み物のセルフサービスコーナーの説明を受けます。

いっちょう東松山店

席につくと「初めてのご利用ですか」と聞かれ、オーダー方法、会計方法の説明を受けます。オーダーは全て座席に置かれているタブレット端末から。

席に置かれているメニューには、お料理ごとに番号がついています。その番号をタブレットに入力し、オーダー数を入力。以上で完了です。

ランチタイムでもこの方式です。ランチメニューを番号で入力します。

 

帰りの際は、席札をもって会計へ。タブレットで会計金額や割り勘金額などが確認できます。

 

お料理メニュー以外も、ありそうな要望は番号がついていてタブレットで注文できます。

例えば「老眼鏡」は○○○番、といった感じ。取り皿の追加、子供用のプレートセットなど、番号でオーダーできます。

回転寿司の機械オーダーをファミレスに導入したようなイメージ。個室での省人化を目指したITです。

 

また今どき珍しいのは、全席喫煙可。全席個室なので、お客様責任での喫煙ということでしょう。席には灰皿がセットされています。紫煙が嫌いで匂いに敏感な方は、この点はマイナスです。ご承知おきください。

 

個室から見える中庭も凝った造りで高級料亭風。上手に雰囲気を演出しています。

現在、積極的にドミナントで出店中。北関東と埼玉にご縁の薄い方は、知らないチェーン店ではないでしょうか。

 

巨大店舗と独自ITが、特徴的で面白いチェーン店です。出店エリアにお出かけする機会があれば、どうぞ試しにご利用ください。

吉見百穴(埼玉県吉見町2016/10)

~車椅子で百穴は無理ですが軍事工場跡には突っ込めます、219個ある古墳時代の横穴墓~

 

小さな岩山の側面に数多くの横穴がある奇観。有料の施設として公開されています。

 

無料駐車場完備で、障害者用駐車スペースは、最も奥の場所にもの凄く大きなスペースで2台分用意されています。

 

この種の施設にしては珍しく、障害者の入場料減免はありません。横穴墓、軍事工場跡、ヒカリゴケの3つが見学の対象です。

 

受付で入場料を支払い施設の中へ。入口の右側に「資料展示館」があり、百穴のガイドビデオが放映されています。その音声は施設内全域で聞こえるように流れていますが、せっかくですから「資料展示館」に立ち寄りましょう。車椅子での入館は可能な、フラットで開放的な資料館です。

 

「資料展示館」のさらに奥に、「埋蔵文化財センター」があります。

この中に綺麗なインドア障害者用トイレがあるので、別にある公衆トイレ併設の障害者用トイレよりも、こちらのトイレがお薦めです。

ただし、「埋蔵文化財センター」は土足禁止で、スリッパに履き替えます。入口に段差はないので車椅子で入館可能ですが、雑巾の備えは無いので、自分で用意して車椅子を拭いて入館しましょう。

「埋蔵文化財センター」は展示室内も含めてバリアフリー。車椅子での館内移動に問題はありません。

 

さて、肝心の横穴墓、軍事工場跡、ヒカリゴケです。小さな岩山の側面に数多くの横穴がある奇観は、施設に入場するとパッと全体が見えます。舗装通路が用意されているので、その上の通行はバリアフリー。岩山に近づくことができます。そこから先は、基本的にバリアゾーンになります。

 

百穴がある岩山には階段ルートが整備され、頂上部には「見晴台」があります。ルートの途中には、横穴墓を覗きこめる箇所も。これは車椅子では歯が立たないルート。登っている人が横穴墓を覗きこんでいる姿を、地上から眺めるしかありません。残念ですが諦めましょう。

吉見百穴

この横穴墓は、古墳時代末期の6世紀末から7世紀末に造られたと考えられています。一つの穴に二つの段があり、複数の人が一つの穴に埋葬されたと推定されます。

明治時代から調査がすすめられ、穴の正体については、当初は住居という意見があったようです。大正年代には国の史跡に指定されました。

 

軍事工場跡は、昭和19年から20年にかけて、旧日本軍による朝鮮人強制労働で掘られた洞窟。飛行機の製造工場をつくる目的であったそうですが、未完のまま終戦。この岩山の下に、広くて背の高い地下通路と地下部屋が残されました。

軍事工場跡の通路や部屋は、床はかなりのデコボコですが、気合を入れれば車椅子で立ち入ることはできます。夏は涼しく冬は暖かい洞窟です。

現在公開されているのはごく一部ですが、それでも車椅子で周るには辛いほどの距離があります。ご自身や介助者の体力に応じて、頑張れるようであれば、入口付近だけでも、地下通路に侵入してください。仮面ライダーのロケ地、心霊スポットとしても有名です。

 

ヒカリゴケは国指定の天然記念物。軍事工場跡の一部に自生しています。自生地の穴の前に「ヒカリゴケ」という看板があるので、観察スポットはすぐにわかります。

ただ、この観察スポットはかなりのデコボコ路面の先。さらに小さな穴を覗きこんで中のヒカリゴケをみるので、車椅子での観察は苦戦します。

妖しく緑色に光るコケは、見る価値はあり。ご自身の障害に応じて、覗きこめるようであれば頑張りましょう。

 

他には、いわゆる売店が2店あります。いずれも舗装通路をすこし外れて、オフロードを通って入店する店舗。車椅子では少々苦戦する売店です。

 

百穴が分布する一帯は、凝灰質砂岩と呼ばれる掘削に適した岩盤が広がっています。古墳時代の人も、旧日本軍も、この掘りやすい岩山を見つけたわけです。そして天然記念物のコケが自生。なんとも不思議な歴史と偶然が積み重なった場所。

 

バリアフリー度は高くはありませんが、車椅子でも全体の不思議な光景を見ることは出来るので、是非お出かけください。