特別支援学校のインフルエンザ発生を連絡する公式文書

この10年ほどで、インフルエンザに対する社会の見方は大きく変わりました。インフルエンザが疑われる症状が出ると、医療機関で検査を受け、陽性であればタミフルなどの効く薬をもちいてしっかり治す。それが当たり前になりました。多くの医療機関では、感染防止のためにインフルエンザ疑い者患者用の待合室もあります。

 

多くの会社で、インフルエンザの場合は勤務を休むようにルールが徹底されてきています。ただの“風邪”とインフルエンザでは、扱いが全く変わる会社が多いようです。学校の場合はもっと徹底されています。ほとんどの小中高等学校では、インフルエンザの場合は欠席扱いにはなりません。また、登校再開には医療機関の治癒証明が必要です。

 

さて身体障害のある人が通う特別支援学校の場合です。体力的に弱い児童生徒が多いので、風邪は大敵です。ましてやインフルエンザは今や社会的にも別格扱いです。インフルエンザの発症者がでると、学校長名の公式文書が全校に発信されます。

特別支援学校のインフルエンザ発生を連絡する公式文書

 

インフルエンザの発生を連絡する公式文書。見たことがあるでしょうか。「インフルエンザを発症者が出たのでお知らせします。・・・・」という文書です。内容としては、発生日、発生者の属性、スクールバスを使用している生徒の場合はその利用しているバスのコース名などです。

 

このうち発生者の属性は、個人情報への配慮があるためか、「高等部の教員」とか「中等部の生徒」など、ぼやかした表現になります。学年や性別の表記もないのが一般的です。もっともそれぞれのネットワークで情報が交換されるので、誰がインフルエンザになったのか、たいてい皆さん知っています。

 

インフルエンザの発症を知らされた家族はどのような対応をするのか、です。ほとんどの家族は、特別な対応は何もしません。明日はインフルエンザの人が学校にいます、という連絡なら休ませるかもしれませんが、発症者が出た、と知らされても、特別にすることがありません。

自分の子どもが発症者に近い環境にいた場合、ひょっとすると感染していて明日にでも発症するかもしれない、と考えて、様子を見るために学校を休ませる家族もいます。でも、そこまで心配する家族は稀です。

 

出来ることは、発症者がでたことでインフルエンザの流行が迫ってきていることを改めて強く認識して、よく手を洗わせる、早寝早起き良い食事など、健康的な生活に気を配るなど、一般的な対処方法を頑張ることです。発症を伝える公式文書は、日常の感染予防をより徹底する動機づけにはなります。皆さん子どもの感染リスクには日常的に神経質ですが、よりいっそう神経をいきわたらせます。

 

体力的に弱い、重度の身体障害がある人にとって、インフルエンザをはじめ各種の感染症はとても怖い病気です。抵抗力が無いため、いっきに肺炎まですすむ可能性が高い人たちです。流行期には人ごみには絶対連れて行かないなど、家族は日常的に神経を使っています。学校も公式文書を出します。インフルエンザの流行期は、重度障害の人にとって、大変な季節です。

特別支援学校のスクールバス

~①スクールバスのスタッフの苦労編~

 

特別支援学校、特に肢体不自由児が通う学校は、スクールバスの運行があるのが一般的です。東京都のある区は、スクールバスを運行するより安くつくという理由で、タクシー通学を認めて費用を負担しています。そういう例外的な行政エリアもありますが、普通はバスで通います。

 

今どきですからバスは民営委託されます。入札が行われ、原則安いところが採用されます。バス運営会社も競争させられるので、コスト管理には厳しくなり、勤務しているスタッフの皆さんも苦労が多いようです。

特別支援学校のスクールバス

運転手さんは現役世代の方です。運転とともに、車椅子乗降のお世話も運転手さんの仕事です。バスの昇降機を降ろして、車椅子をセットして、車内で車椅子を固定させるところまでが責任業務です。

 

もう一名、乗車中の児童生徒のお世話をする、乗車スタッフがいます。乗車スタッフは定年後の世代の方、パート的な勤務契約の方が多いようです。乗車中に何か起こらないかを見守るのが仕事で、医療的ケアなど責任が発生する業務は行いません。

特別支援学校のスクールバス

勤務拘束時間は長いお仕事です。東京都杉並区のある特別支援学校の、あるバスコースの場合の例ですが、バスの基地は八王子のはずれで、毎朝5時台に出発し、中央高速経由で都内のコースに入り、9時前に学校に到着します。

 

昼過ぎまでは休憩タイム、午後になると1便2便の2回帰宅のコースを廻り、最終の生徒を降ろすのが都内で17時過ぎ、そこから八王子に戻ります。乗車スタッフの方は、自宅に都合の良い途中で乗降します。

 

障害のある児童生徒を乗せているので、いろいろな事件が起こります。ありがちなのは、おう吐や排泄のトラブル。深刻な状況でなければ、学校や自宅まで送り届けます。深刻なのは、大きな発作などです。状況によっては、救急車の出動を要請することもあります。

 

コミュニケーションが容易に成立する児童生徒だといいのでしょうが、現実にはバスのスタッフさんから見れば全く解らない表現しかできない児童生徒のほうが多いでしょう。気を遣うお仕事です。

 

学校の先生や保護者との関係も、ストレスになることが多いようです。時間が遅れたり早かったり、児童生徒への対応が気に入らないなど、なかなかどうして、苦情を言われることが多いお仕事です。特にセクハラ疑惑をかけられると、真面目に仕事をしている人はとても辛いそうです。

 

バス車両は、学校がお休みの日は別のお仕事をします。そのために学校名などのシールは、簡単に外せるようになっています。夏休みなどは運転手さんは別の仕事をするそうです。スタッフさんは、基本的に子ども好きで障害福祉に関心のある人が多いようですが、長続きせずに、すぐにスタッフが変わるバスもよくあります。ヘルパーさんの過酷な労働条件は時々話題になりますが、スクールバスのスタッフの方も、もっと幸せに働けるようになるといいですね。

 

特別支援学校のスクールバス

 

~②スクールバスの保護者の苦労編~

 

児童生徒をスクールバスで通学させる保護者にとって、最大の問題は乗降する場所、通称「バス停」がどこになるかです。

 

自宅の目の前であれば最もよいのですが、道が狭くてバスが入れない、乗降の為の停車が人迷惑、そこまで行っていると時間がかかり過ぎる、などの理由で、自宅から離れたバス停を設定されるケースはママあります。雨の日、風の日は、バス停まではマイカーで行く人もいます。車椅子の児童生徒の場合、バス停までが坂道かどうかも深刻な問題です。

 

バス停を決定するのは、学校のバス担当の先生です。毎日のことなので必死です。かなり激しく、バス担当の先生と遣り合う保護者、確かにいます。

 

他にも保護者から見ると、気に入らない決定がいろいろとあり得ます。実際に合ったトラブルのご紹介です。

 

行き帰りとも、バスの時刻表は決まっていますが、自分よりも学校により近い利用者の生徒が、ほとんど休みでバスを利用しないことが多い場合、利用しない生徒のバス停に寄らない分、いつもバスの時間が余ることになります。臨機応変に時刻表を変えてくれ、という要望が出ましたが、学校は対処しませんでした。

 

大型の車椅子を使用する生徒の利用するバスが小型で、乗降時に頭がぶつかることがありました。保護者は即刻学校に大きなバスへの変更を要望しますが、いったん決めたバス会社とそこのバスなので、来年の4月までは今のままで、という学校バス担当からの回答。このケースの場合は、保護者父親が学校に乗り込み、校長に直訴したことで年度内にバスが変更されて解決されました。

特別支援学校のスクールバス

東京都の場合、医療的ケアが必要な児童生徒のバス通学に、保護者の同乗を認めず、保護者がマイカー等で通学させるか、訪問学級にするかを求められます。そして、通学級を選んだ場合、医療的ケアのために、登校中保護者は学校に待機することが求められます。

 

重度障害のある子が通う特別支援学校には「保護者控室」があります。何人もの重度障害のある子の保護者が、子どもと一緒に学校に行くのなら、バスに同乗させてくれ、と交渉していますが、空席があっても原則認められません。

 

日常的な運用面でのよくある不満です。バスを実際に運行しているスタッフは、学校から委託を受けている業者さんなので、何かを自分の判断でしてはいけないルールになっています。

もちろん気の利いたスタッフの方もいますが、「こういう場合はうちの子に毛布を掛けてあげてください」と言っても、「学校の先生に言ってもらえますか」という返答になることがあります。これは極端な例ですが、バスの話なのにバスの人が聞いてくれない、ということはママあります。

 

安全第一が大切なのは間違いありません。実際、スクールバスでの人為的な深刻な事故は、聞いたことがありません。固いルールのスクールバスに、ちょっとイラつきながら付き合っている、というのが保護者の実態です。

特別支援学校の遠足

重度障害のある子が通う特別支援学校でも、遠足があります。中学高校になると、校外学習ですね。学校の先生方が、周到な準備を重ねて企画します。本稿では、毎年5月に、全校生徒で大きな公園に遠足にでかける小学校の例をご紹介します。特別支援学校の遠足

遠足でも体調の管理は慎重に行います。遠足の3日前くらいから、朝晩の熱を記録するシートが家庭に配布されます。家庭では熱を測っての記入です。当日の荷物の準備も大変です。5月の公園の気候は、当日その場でどうなるのか分かりませんので、暑さ対策、寒さ対策の両面で備えます。急な雨への対策も準備しておきます。

 

当日はお弁当です。普通食を食べることが出来る子のご家庭は、普通の遠足のお弁当の準備と同じです。

 

たいへんなのは、中期食や初期食の子どもの家庭です。作り慣れているとはいえ、せっかくの遠足お弁当ですから、美味しくて、見た目にもこだわったお弁当を作ります。ミキサーやトロミ材を巧みに使って、驚くほどの仕上がりのお弁当をつくるご家庭もあります。そういう子どもは、お出かけの支度、朝の食事も一人ではできないので、家庭の朝は大忙しです。

特別支援学校のスクールバス

通常通りのスクールバスで登校します。9時前には全員が学校に到着。9:30には学校から公園に出発です。全校遠足なので、スクールバス全便がフル動員され、先生と児童が乗りこみます。

 

先生の荷物も半端ではありません。着替えやオムツ替えが必要な児童のために、大型のテントまで持参します。万が一に備えた救急道具も、酸素ボンベまであるフルパックです。レクリエーション生演奏用のギター、太鼓など楽器類も持っていきます。

 

重度障害の児童の遠足は、マンツーマン対応が基本です。保健室の先生も含めて、学校側も総員で対応します。児童と先生がペアで、お散歩をしたり、ゲームで遊んだり、先生のギター演奏で歌ったりします。

 

そして昼食タイム。初期食の児童の場合、お食事だけでつきっきり1時間かかる子もいます。先生は自分の食事は片手でパクパクでおしまいです。日頃から慣れているとはいえ、公園でのお弁当は、いつもとは違う大変さがあります。

15時過ぎには下校のスクールバスの時間になるので、昼食後は学校に戻る準備が始まります。大荷物の片づけです。実質10時過ぎに到着し、13時過ぎには出発になります。それでも公園で1回か2回は、児童のトイレが入ります。大忙しの遠足がこれで終わります。

 

学校に到着すると、ひと休憩。体力的に弱い子が多いので、無理は出来ません。ゆっくりと水分補給をして、軽いストレッチなどで体調を整えます。隙間をみて先生たちは、今日の様子を連絡帳に書きます。そして下校、お疲れ様でした。

 

ある特別支援学校の遠足の実際でした。この学校の場合、遠足の写真は後日教室や廊下に掲示され、保護者も見ることが出来ます。