障害者への「合理的配慮」の義務化

障害者の人権を保障する、差別を禁止するための動きが活発です。

 

難しい法律解説を避け、ざっくり説明すると、国連で条約が出来て、それを守るための日本国内法が2013年に成立し、2016年に施行、そして国連条約の批准と進む予定です。その条約や法律の柱の一つが、障害者への「合理的配慮」の義務化です。

 

パッと見て、わかり難い言葉です。「合理的配慮」。

 

こちらもざっくり説明すると、障害のある人、一人一人が不利益を被ることがないように、お金を「合理的」な範囲で使いましょう、ということです。

障害者への「合理的配慮」の義務化

車椅子の人が勤務できるように、会社に障害者用トイレを設置する、希望する学校に通学できるように校舎に昇降機を設置する、などが合理的な配慮です。

 

通勤のためにお抱え運転手付きの社用車を用意させる、通学のために校舎を立て替えて全面バリアフリーにさせる、こういう話になると合理的な範囲を超えた対応になります。こういうイメージです。

 

「合理的配慮」。

何が合理的なのか、どこまでが合理的なのか、実際の運用がとても難しい言葉です。そこで行政サイドで具体的な基準や事例の整備、および法律整備が進められています。

 

厚生労働省なら障害者の雇用、勤務における合理的配慮、文部科学省なら学校教育における合理的な配慮の基準や具体例の明示がまとめられています。

 

おそらく真っ先に変わるのは、学校だと思います。

身体障害を理由に、普通校への入学が拒否されることが無くなるでしょう。また医ケアが必要な生徒のために必要な設備の整備が進むはずです。教員の不足、医療スタッフの不足など、人的リソースの問題も、徐々に解決されていくでしょう。

障害のある人、一人一人のへの合理的な配慮が義務です。個別の事情への対応が進むはずです。

障害者への「合理的配慮」の義務化

お金の問題以外でも合理的な配慮はあり得ます。

例えば、現在すでに司法試験は点字での受験が可能で、点字受験の場合は問題を読む時間が長くかかるという合理的な理由によって、試験の時間が延長されています。こういう「合理的配慮」もあります。

 

さて、法律、条約で保障される「合理的配慮」。ここに魂を入れていくには、障害のある人やその周囲の人が、自ら声を上げて自分のための具体的な「合理的配慮」を求めていく必要があります。

 

何が「合理的配慮」なのか、最終的には当事者にしか解りません。他者が、こんなもんじゃないですか、と想像して決めた基準や事例では限界があります。お役所に任せている場合ではありません。

 

これからの時代は、障害のある側からの情報発信がとても重要になります。権利意識を振りかざして、とにかく自分のためにお金をかけろ、という主張とは違います。必要なことは、こういう配慮があれば、こんな活動ができる、という提案だと思います。

 

障害のある側にも企画力や提案力が求められます。生きるちから舎は、そこでお役に立てる活動を目指しています。

多くの人は障害者になる

「ピンピンコロリ」願望などといいますが、人生の最後がどうなるか、なんとなく気になります。高齢者医療の現場を見ていると、多くの人が人生の最後までには、なんらかの障害をもつ、という実感があります。このことだけをみても、人間を障害者と健常者で線引きすることの難しさを思います。

 

いわゆる健常者として中高年になった人が、将来の自分の負う障害のタイプを想像して、もっとも恐れるのはアルツハイマー病などに代表される「知」や「精神」の領域の障害なのではないでしょうか。

 

統合失調症の人や、ハイファクションな自閉傾向の人などの著作が、数は少ないですがあります。読むと「知」や「精神」に障害のある人の感覚やイメージが多少は解ります。他者には難解なパートも多々ありますが、是非読まれることをお薦めします。

 

「身体」に関わる障害は、「知」や「精神」の障害に比べれば、大変イメージしやすい障害です。

いつかは歩けなくなるな、脳卒中になると後遺症が残るのだろうな、噛めなくなるな、見えなくなるな・・・。そうなってしまった後の生活や人生は、想像しやすいでしょう。

無駄に将来を悲観する必要もありませんが、日常生活を節制するためにも、時々はあえて悲惨な障害生活をイメージするのも価値があるかもしれません。

多くの人は障害者になる

内閣府が公式に発表しているデータが、現時点では平成18年までなので少し古いデータになりますが、年代別の在宅の身体障害者の出現率を1000人に対して何人という表現で示すと以下になります。

 

20歳代:3.9人 30歳代:5.4人 40歳代:13.0人 50歳代:24.2人 60歳代前半:46.5人 60歳代後半:72.1人 70歳以上:96.2人。70歳以上では96.2人/1000人ですから、ほぼ10人に一人は身体障害があることになります。

 

身体障害の疾患のベストスリーは、一位が心臓疾患でシェア11%、二位が脳血管障害で10%、三位が骨関節疾患で9%です。

ちなみに脳性麻痺は2.5%にすぎません。身体障害全体のなかでみれば、加齢とともに心臓や血管、骨関節に障害を負う人が多数派です。

 

マクロ的にみると、身体障害の人が366万人、精神障害が323万人、知的障害が55万人というデータがあります。複数障害の人もいますが、おおよそ日本人の6%が障害者になります。

 

人生80年オーバーの時代です。多くの人は人生のどこかで障害を負います。健常な人は障害者の予備軍です。そういう意識をもって、バリアフリーを考えましょう。見ないものが見えてくると思います。

社会福祉法人は、社内結婚が多い?

はっきりとした統計データがあるわけではありませんが、障害のある人を対象にした活動をしている福祉団体の人で、ボランティアではなく職業として関わっている“正職員”の人は、職場結婚をしている人がとても多いように思います。

 

半径○○メートル以内の人と結婚する確率が○○%という話があるように、身近な存在の人と結婚する確率が高いのは当然なのかもしれませんが。

 

そしてあくまで個人的な印象ではありますが、福祉法人のカップルは、年齢的なこと、ルックス的なことなど、いわば“見た目”でお似合いのお二人・・・、とはとても思えないカップルが、かなりいると思います。「エッ、あの二人が結婚しているの!」という印象のカップルを相当数知っています。

 

きっと人生の価値観のような、深いところで共鳴できるカップルなのでしょう。障害のある人を対象にした活動をしている福祉団体の人で、“高給取り”はおそらくいません。仕事も、“きらびやか”“華やか”などとは対極の仕事がほとんどです。そういう仕事に人生の価値や喜びを見いだせる二人が結ばれる。とても素晴らしいことに思えます。

 

でも、生活は大変ではないかと心配します。365日営業の団体の場合、休日が同じになることはあまりないでしょう。24時間体制の施設なら、寝る時間もバラバラになるでしょう。人出不足気味の団体の場合は、ご夫婦二人が同じ日程で連続休暇を取るのが、はばかれるのではないでしょうか。

 

経済的な不安もあると思います。永遠に元気に共稼ぎができる人生である保証はなく、将来への漠たる不安は、一般の企業で働いている人たちよりも強いのではないかと案じます。“企業年金”のような制度が、十分に確立しているようには見えません。

社会福祉法人は、社内結婚が多い?

一方で、福祉活動とは社会奉仕活動であり、福祉の仕事で儲けるなどとんでもない、という世間一般の価値観があります。もし障害者福祉の仕事をして巨額の利益を出した社会福祉法人が出現したら、マスコミは総攻撃をかけて“福祉を食い物にした・・・”とパッシングするでしょう。

 

以前、福祉系の事業をしている会社の営業会議で、成績順に営業所長の席を決めていただけで責められました。一般的な企業で行われている利潤追求のマネジメントをしただけでも、きっと非難されるでしょう。

 

社会福祉法人で、やりがいをもって共働きをしているご夫婦をみると、その生活を想像します。もっと収入を上げる為には、利潤の論理に組み込まれた仕事をする必要があります。一方そういう論理は、ご夫婦の価値観には合わないでしょう。といって福祉の世界の人は、低収入のままでいいのか。ある程度のお金は欲しいと思うのも当然です。

 

組織に属して、障害者福祉の仕事だけで生計を立てているご夫婦が大勢います。仕事の価値観、当人の能力、そして経済力を、バランスよく成立させるのは至難の業です。一歩ずつでも“食える福祉”にしていきたいですね。