重度障害の人が書く字を読み取る

 

もう随分前のことですが、NHKの番組「奇跡の詩人」が放送され、重度障害のある子どもの指の動きを母親が読み取って書かれた詩が公開、その真偽について話題になったことがありました。

 

この番組での偽物騒ぎの後遺症で、その後あまり表立った報道がされることがありませんが、重度障害のある人のかすかな指の動きを読み取る活動は、現在まで継続して取り組まれています。

重度障害の人が書く字を読み取る

中心になっているのは国学院大学の柴田先生の研究室です。大学の先生といっても、とても気さくでフットワークの軽い先生で、障害の現場に行き活動されています。発語や体の動きがなく、意思表示が難しい重度障害の人のコミュニケーション方法を研究開発、そして実践されています。

 

操作がしやすいように工夫された文字盤やPCボードなどを使って介助者が指の動きをサポートして字を特定する、かすかに動く指で介助者の手のひらに字を書いてもらい介助者がそれを読み取る、などの方法が実践されています。NHKの番組で偽物騒動になったのは、この指による手のひら書き方式です。

重度障害の人が書く字を読み取る

障害によって全く発語がない人でも、人の話を理解できる人は大勢います。重度障害のため、ほとんど反応が無い人も、その内面には豊かな言語の世界をもっている可能性があります。研究室の読み取りノウハウにより「今までまったくわかってもらえなかった」「初めて人間として認められた」という主旨の言葉が引き出された、という複数の重度障害の人の事例が研究の成果物です。

 

この方法によって、重度障害のある子どもとのコミュニケーションが成立した、とたいへん喜び、日々自分でもこの方式を実践しているご家族を複数知っています。その一方、実際に体験しながらも全く読み取れない、つまり信じていないご家族も多数知っています。

重度障害の人が書く字を読み取る

真贋はどうなのでしょう。障害のある本人からの明確な意思表示がないのですから、真実か、はたまた勘違いなのかを、解り易く立証することはできません。

今のところ真実派の根拠は、本人や家族しかしらないことを研究室メンバーが読み取った、という事例です。

逆に勘違い派の根拠は、そんなことをこんな言うはずがないようなことを、ハイスピードで読み取られた、という経験です。

 

私はこの方式の真贋を問うことに価値を見出せません。大切なことは、コミュニケーションが難しいレベルの重度障害のある人への教育の方法や意思の確認の方法を、研究開発し実践して更に高度化する取り組みを継続すること自体にあります。

 

嘘くさいから否定して何もしない、これで出来るので別の方法は考えない、というのがダメで、IT、心理、人間工学など様々な学問領域からの研究開発が行われることが重要です。

 

現在は柴田先生の研究室しか、この分野の研究開発に取り組んでいないと思われます。是非、官民合わせて研究開発に取り組む機関が増えることを期待します。